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相続の基礎知識

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1、相続するとは

親しい人が亡くなるのは悲しいことですが、私たちはしっかりと生きていかなければなりません

 ご自分も、親しい人も、いつかは亡くなってしまいます。 そして、故人が生前に築いた財産は誰かに引き継がれていきます。 ご存知のとおり、これを「相続する」といいます。

 気をつけなければならないのは、不動産や預貯金、株式といったプラスの財産だけでなく、借金や損害賠償の責任といったマイナスの債務についても相続人が受け継ぐことになることです。

 また、故人が持続的な契約を結んでいた場合の地位についても、死亡により終了するものを除くと相続人に受け継がれることになります。 例えば、故人が生前に不動産を賃貸していた場合、その賃貸借契約の内容はそのままに、相続人が賃貸人の地位を引き継ぐことになります。法律用語ではこれを包括承継といいます。

 このページでは、相続が起きたときに知っておくべき基本的な知識を紹介します。

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2、遺言はありますか?

 身近な人が亡くなったときにまず確認しなければならないのは、故人が遺言を遺されているかどうかです。遺言がある場合は基本的にはその内容に従って、財産を受け継いでいくことになるからです。

 遺言がない場合や、遺言に書かれていない財産がある場合には後で説明する法定相続により相続することになります。

自筆証書遺言と公正証書遺言

 遺言がある場合、それが自筆証書遺言か公正証書遺言か(あるいはそれ以外の遺言か)を判断しなければなりません。難しく考える必要はなく、公正証書遺言の場合は「公正証書」と表紙に書いてあります。そうでない場合は自筆証書遺言だと思われますが、多くの場合、封がされています。何が書かれているか一刻も早く知りたいお気持ちは分かりますが、自筆証書遺言の開封は家庭裁判所で遺言書の検認という手続で行わなければならないのでご注意ください。

 遺言については詳しくは、遺言のところで扱っていますのでご覧ください。

遺言執行者

 遺言には、故人が遺言の内容を実現してもらうために遺言執行者を定めていることがあります。 遺言執行者が定められている場合は、その方が各種財産の手続を主導していくことになります。

 遺言執行者が定められていない場合、遺言により取得した人が単独で手続できることもありますが、法定相続人と遺言で財産を受け継ぐこととなった方が協力して手続を進めていくか、家庭裁判所で遺言執行者の選任を申し立てて、選任された方に手続を進めていってもらうことになることもあります。 必ず家庭裁判所で遺言執行者を選ばなければならないこともあるので注意が必要です。

遺留分(いりゅうぶん)

 相続人であるのに自分が受け継ぐ財産があまりにも少ないのではないか、と思われることもあるかもしれません。そんな時に主張できるのが遺留分です。具体的にはもっと複雑ですが、遺留分の簡単な計算はこのようになります。

 相続財産の総額×1/2(直系尊属のみが相続人のときは1/3)×次項の法定相続分

 なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。

 法定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は兄弟姉妹には遺留分がないため、配偶者の遺留分割合は相続財産全体の1/2になります。

 遺言に納得がいかない場合、注意しなければならないのは遺留分減殺請求という方法で遺留分を主張しなければ、遺言は有効であり、遺留分減殺請求の権利は遺言の内容を知ってから1年以内(遺言の内容を知らなくても故人の死亡から10年以内)にしなければならいことです。

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3、法定相続と相続分

 遺言を書くとある程度自由に遺産の行方を決められますが、民法によって親族関係に応じて、あらかじめ定められている相続人や相続分があります。法律の規定による相続なので、「法定相続」といいます。

 法定相続は亡くなった時点での法律が適用されるため、時代によって相続人の考え方は違いますが、ここでは現在の法律を前提に説明します。

相続人は誰か

配偶者は常に相続人となります

 まず、故人の配偶者は必ず相続人になります。右の図では、Aさんが亡くなったときに奥様であるBさんが相続人となります。

 亡くなられたときに婚姻関係にあることが必要で、離婚されている場合の元配偶者の方は相続人ではありません。

 常に相続人となる配偶者を除くと、他の親族の方は以下の順位で相続人となります。

① 子(養子も含みます)

② 子がいない場合、直系尊属(直系の父母、祖父母のことです。父母が皆先に亡くなられている際に祖父母がご存命でしたら、祖父母が相続人になります。)

③ 子も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹

 配偶者や①~③にあたる人が誰もいない場合、相続財産管理人の手続を使うことになります。

相続分を計算しましょう

 次に、相続する権利の割合をみてみましょう。これを法定相続分といいます。

① 配偶者と子が相続人

子がいれば、相続人となります

 この場合、配偶者が1/2、子は残り1/2を平等に分けます。

 右の例では、Aさんが亡くなると奥様のBさんと、Aさんの子であるCさん、Dさんが相続人となります。

 このとき、法定相続分はBさんが1/2、CさんとDさんは1/4ずつです。

② 配偶者と直系尊属が相続人

子がいないときは父母等の尊属が相続人となります

 この場合、配偶者が2/3、直系尊属は残り1/3を平等に分けます。

 Aさんにはお子さんはおらず、ご両親がご健在だったときのことを考えてみましょう。 Aさんが亡くなるとAさんの奥様であるBさんと、Aさんには子がいないので、Aさんのご両親であるEさんとFが相続人になります。

 このとき、法定相続分はBさんが2/3、EさんとFさんはそれぞれ1/6になります。

③ 配偶者と兄弟姉妹が相続人

子も尊属もいなければ、きょうだいに相続権があります

 この場合、配偶者が3/4、兄弟姉妹は残り1/4を分けますが、故人と父母の一方が異なる兄弟姉妹は、故人と父母が同じ兄弟姉妹の半分の割合で分けます。

 右の例は、Aさんには子がなく、ご両親のEさんとFさんはAさんより先に亡くなっていたときの相続関係です。

 相続人になるのはAさんの奥様であるBさんと、Aさんには子がなく、ご両親も先に亡くなっているため、ご兄弟のGさんとHさんが相続人になります。

 このとき法定相続分は、Bさんが3/4、GさんとHさんはそれぞれ1/8ずつになります。

 なお、これまでの例で配偶者の方が先に亡くなられていた場合は、単純に相続財産全部を子(または直系尊属または兄弟姉妹)の間で上の割合で分けることになります。

代襲相続(だいしゅうそうぞく)

生きていれば相続人となることができた人の子どもも相続人になれます

 相続人となることができた子や兄弟姉妹が故人より先に亡くなっていた場合、その子(兄弟姉妹)に子がいれば、その子が相続人になります。これを代襲相続といい、生きていれば相続人になることができた人のことを被代襲者といいます。相続分は被代襲者の相続分の範囲で、子の人数で平等に分けます。

 右の例では、Aさんには奥様であるBさんと、Aさんの子であるCさんがおり、もう一人の子であるDさんはAさんより先に亡くなっている場合です。DさんはIさんと夫婦で、二人の間にはJさんとKさんという二人のお子さんがいたとしましょう。 この場合Aさんが亡くなると、Aさんの奥様であるBさん、Aさんの子であるCさんの他、Dさんを被代襲者とする代襲相続により、JさんとKさんが相続人となります。

 法定相続分はBさんが1/2、Cさんが1/4、JさんとKさんはそれぞれ1/8になります。

 代襲相続は子が先に亡くなっているとき、兄弟姉妹が先に亡くなっているときに起こりますが、兄弟姉妹が先に亡くなっているときには代襲するのは兄弟姉妹の子(つまり甥・姪)までとなるのに対し、子の代襲は子の子(つまり孫)が先に亡くなっていればさらにその子(つまり曾孫)・・・と下の代がいる限りどこまでも相続人となるという違いがあります。

数次相続(すうじそうぞく)

相続人が亡くなると、2次3次の相続が発生します

 また、故人が亡くなった際にはご存命だった相続人が、遺産分割等で相続関係が確定する前に亡くなってしまった場合は、その相続人の相続人が、故人の相続人である地位を相続することになります。これを数次相続といいます。

 一般的な相続知識の学習ではその方が亡くなった時点での相続人と相続分までしか考えないことが多いため耳慣れないことばかもしれませんが、実際上は相続人が亡くなってその相続人に権利が引き継がれていくというのはよくあることです。

 先と同じ家族関係の図を見ながら、Dさんが亡くなったのはAさんが亡くなった後だったときのことを考えてみましょう。

 Aさんが亡くなったときにはDさんは生きているので、Aさんの相続人はBさん、Cさん、Dさんです。しかしその後Dさんが亡くなると、Aさんの相続人の地位がDさんの相続人に引き継がれます。 結果、Dさんの奥様であるIさん、子であるJさんKさんも(Aさんの相続人としての地位を相続した)相続人となることになります。

 このとき、「Aさんの相続手続」という視点での法定相続分は、Bさんが1/2、Cさんが1/4、Iさんが1/8、JさんとKさんはそれぞれ1/16となります。

相続人ではなくなる場合

 以上が原則的な相続人の範囲ですが、以下のような場合にはその方は相続人ではありません。
・相続を放棄した場合(詳しくは相続放棄のページで説明しています。)
・故人に相続人として廃除された場合
・相続の欠格事由がある場合

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4、遺産分割協議

 遺言がない場合、で説明した相続人全員で、誰がどの財産を相続するか協議することになります。これを遺産分割協議といいます。このとき、法定相続分を細かく守らないといけないわけではありません。相続人の間の事情により、ある人が相続する財産が多かったり、その分ある人が少なかったりするのは、相続人の皆さんがそれでいいと納得されるのでしたらそれで構わないのです。

 遺産分割協議が整ったら、必ず遺産分割協議書を作成しましょう。で説明する手続で必ず必要になりますし、後々のトラブルを避けるためにも絶対に必要だと思ってください。

 このとき、「私は相続を放棄する」と言って、自分の取り分がゼロの遺産分割協議書に署名押印する方がいらっしゃいます。事情は人それぞれですが、口頭で「相続を放棄する」といっても法律上は相続人の地位は継続しています。今後一切他の相続人の方と関わりたくない方や、借金があることを危惧されている方は家庭裁判所で相続放棄の手続きをしておくことをお勧めします(詳しくは相続放棄のページで説明しています)。

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5、各種財産の相続手続

 このような流れで、遺言や遺産分割協議により誰がどの財産を引き継いでいくか確定したら、不動産や預貯金、株式の各種手続を進めていきます。

不動産

 固定資産税の納税者の届出とは別に、法務局で名義変更の手続(相続登記)をしなければなりません。法律上の義務ではありませんが、放置すると大変なことになります。手続については相続登記のページをご覧ください。

預貯金

 預貯金がある金融機関ごとに手続をすることになります。必要な書類や戸籍・印鑑証明等の原本の返却をしてくれるかどうかが金融機関ごとに異なるので、遺産分割協議に取りかかる前に必要書類を確認しておくことをお勧めします。

株式

 上場企業の株式か非上場企業の株式か、証券会社はどこでどんな商品か等で手続が変わってきます。預貯金と同様に必要な書類を確認してから遺産分割協議をすることをお勧めします。

会社の役員をされている方が亡くなった場合

 各種財産の名義変更の他、年金や保険、退職金等の手続をしなければなりませんが、亡くなられた方が会社の役員をしていた場合、役員変更の登記が必要になります。

その他の公的な手続

 年金や社会保険、税金等の公的な手続については死亡後の諸手続のページをご覧ください。

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